芦沢央作 『僕の神さま』感想
『あなたは後悔するかもしれない。第1話で読むのをやめればよかった、と』
出典:『僕の神さま』帯のキャッチコピーより
©芦沢央/青柳昌行/株式会社KADOKAWA
最近、芦沢央作 『僕の神さま』読んだ。
出典:『僕の神さま』表紙より
©芦沢央/青柳昌行/株式会社KADOKAWA
※2020/09/12時点、KADOKAWA文芸WEBマガジン・カドブンで第1話・2話の試し読みが可能です。
リンク
https://kadobun.jp/trial/bokukami/5w34cwhjx38k.html
今作は『神さま』と呼ばれる小学生、水谷君と同級生の僕・佐土原との交流が描かれている。
水谷君が『神さま』と呼ばれる理由・・・
それは彼がみんなに頼りにされる名探偵だから。
某有名小学生名探偵には劣るが、小学生らしからぬ知識量と洞察力を駆使してクラスメイトの悩みを解決していく。
そんな彼を『神さま』と崇め、付いて行く僕・佐土原。
僕・佐土原が語り部で物語が進んでいく。
前置きはこの辺りにして。
物語は全5話(第1話~4話・エピローグ)である。
1話はほのぼのした子供らしいストーリーで僕・佐土原が祖父の家に遊びに行った時、死んだ祖母の形見である”桜の塩漬け”をダメにし、それをどうすればいいのか水谷君に相談するというストーリー。
ここで水谷君の小学生らしからぬ名推理に驚いたことと、最後の祖父の台詞にホロリと来た。
1話を読み終えてふとキャッチコピーを思い出した。
”これから先を読むと後悔するかもしれない”と。
キャッチコピーの通り、2話から本番。
2話では新たに登場する同じクラスメイトの女子生徒、川上さん。
絵を描くのがとてつもなく上手く、彼女は”ある思い”を抱えて水谷君に相談する。
この”ある思い”というのは水谷君が解き明かす流れなので、是非手元にとって読んで欲しい。
全編読み終えてから自分の小学生時代の友人関係を思い出した。
僕・佐土原が「神さま」と呼ばれるの水谷君を崇め、依存する関係性が。
物語が進むにつれてお互いの関係性が徐々に変化し、別れが来る。
それは僕・佐土原の自我が目覚めた時。
エピローグのラストがまんま昔の自分と重なり、何て残酷で切ない物語なんだと感じた。
ミステリー小説はよく読むが、今まで読んだことがないストーリー。
登場人物が”小学生”というのがポイント。
それは現実で直面する危うさと脆さ、未熟さを1番痛感する年齢だから。
面白い小説と出会った。
終
以上です。今回は芦沢央作 『僕の神さま』の感想でした。
今後も面白い小説があれば、紹介したいと思います。